2018/08/29

レビュー:We Are Legion(We Are Bob)



We Are Legion(We Are Bob)
著:Dennis Taylor
お気に入り度:★★★★☆
読みやすさ:★★☆☆☆

Kindle Unlimited対応。

大人向けのSFシリーズ、3部作の第1作です。
邦題では「われはレギオン」となっており、現時点で2巻まで翻訳済み、3巻ももうすぐ出る予定ですね。

作者は昔ながらのベタなスペースオペラ大好きらしく、本作は定番中の定番のようなSF要素を詰め込んだものになっています。

主人公はプログラムで当てた資金で、死後に体を保存するサービスを契約。
そして直後に交通事故で死亡。(^_^;)
目覚めてみたらAIになっていた、という設定です。

正確には自分自身が目覚めたわけではなく、脳をスキャンして主人公の思考をプログラム的に再現したものだということで、この時点で主人公が変わっています。
そしてフォン・ノイマンマシンの制御AIとして送り出されます。

例えばここで、フォン・ノイマンマシンというものを知らないと、ちょっと読みづらいストーリーになっていますね。
全体的に比較的ライトな文体で数学的な知識は求められないながらも、そこそこ前提とするSF知識が多く、とっつきやすさはかなり人による、読者を選ぶ小説といえます。

新スター・トレックが好きだった人なら間違いなく楽しめます。

Lexileレベルは登録なし。
感覚的には1000台くらいかな?
YLは7でしょうか。
長さはreadinglength.comの、Audibleファイルの長さからの類推で、82,650語だそうで、結構読み応えはあります。


さて、ここまでが本の基本的な紹介。
せっかくなので、スター・トレック大好きな僕が、本書で出てくる主なスター・トレック用語を簡単に説明してみます。
もし、「あまりスター・トレックしらないからわからないところがあった」という方がいらっしゃったら、参考になるかもしれません。
あまり直接的なネタバレにはならないと思いますが、まっさらな気持ちで読みたい方はご注意。

ではどうぞ!


■■スター・トレック豆知識

●ボーグとデータ
「ボーグというよりデータかな」というセリフが出てきます。
ボーグというのは、スター・トレック世界の敵性エイリアンの一種。
もともとは有機生命体ですが、体内の大部分を機械化していて、個体がお互いにリンクしており、集団として一つの意識を持って行動する種族です。
種族と言っても、ボーグは戦闘で捕虜にした多種族を同化し(機械化し)取り込むので、出自はいろいろです。

データは宇宙艦隊の士官で、アンドロイドです。
天才科学者作った陽電子脳というものを持っています。
人間に非常に近いですが、感情が理解できず、人間らしさを学ぶことにこだわっています。

We Are Legionでのこの2つの比較は、ボーグはもともとが有機体で機械化したもの、データはもともと機械で有機体らしくなろうとしているもの、という意味で使われています。


●エンタープライズ
USSエンタープライズは、スター・トレックでカーク船長やピカード艦長が乗った船の名前です。
シリーズによっては主人公たちが乗る宇宙船はちがうものもありますが、どの次代でもエンタープライズはスター・トレック世界の中心的な宇宙船という設定になっています。


●フェレンギ
フェレンギは、友好的(?)なエイリアンです。
商売が文化の中心になっており、戦闘は苦手です。


●バルカン
ミスター・スポックが有名な、エイリアン種族です。
身長が高く、尖った耳と尻上がりな眉毛が特徴的で、論理的な行動を好みます。
バルカンと祖先を同じくするエイリアン種族にロミュランというものがあります。
バルカンの母星は、半公式設定ではオミクロンであるとなっているそうです。
ロミュランの母星はロミュラスです。


●クリンゴン
好戦的な種族で、スター・トレックシリーズを通しては敵であったり味方であったりと、立場が流動的なエイリアンです。
鬼のような見た目で、身体能力も高い設定です。


●ライカー
ウィリアム・T・ライカーは、新スタートレックでピカード艦長の補佐を努めた、エンタープライズ号の副長(中佐)です。
新スタートレックでは指揮管理部門のユニフォームは赤となっていて、副長のライカーも赤ユニフォームを着ています。
また、シリーズの途中からはやしたヒゲが特徴的です。

カーク船長の初代スター・トレックでは、副長はファーストオフィサーと言っていますが、ピカード艦長はライカーのことを、ナンバーワンと呼称しています。


●フェデレーション(惑星連邦)のユニフォーム
ライカーの話とも関連しますが、スター・トレックの宇宙艦隊のユニフォームは部門ごとに色分けされています。
時代によって変わりますが、We Are Legionでは主に新スタートレックをベースにしているようなので、新スタートレック時代の話をします。

赤:指揮部門(艦長・副長など)
黃:オペレーション部門(通信・索敵・保安・操舵・エンジニアリングなど)
青:科学・医療部門(医者・科学者など)

基本的に、艦長・副長が赤で、医務室が青、あとは大体黄色という感じですね。


●スター・トレック冒頭の言葉
初代スター・トレック、新スター・トレックではドラマのはじめに次の言葉が流れます。

Space, the final frontier. These are the voyages of the starship Enterprise. It's five year mission, to explore strange new worlds, to seek out new life and new civilizations, to boldly go where no man has gone before...
※新スター・トレックでは「five year mission」ではなく「continuing mission」

We Are Legionもフォン・ノイマンマシンとして宇宙を探索していくということで、ボブはこれを思い出したのでしょうね。


●シャトナー
ウィリアム・シャトナーは、カーク船長を演じた役者。


●スコッティー
モンゴメリ・スコット(通称スコッティー)は、初代スター・トレックのエンタープライズ号の乗組員で、エンジニア。


●Beam me up
スター・トレックではおなじみの転送装置というものがあります。
これは船から惑星に降りるときなど、シャトルじゃなくて直接転送で行けるという便利なもの。どこでもドアみたいなもんですね。
で、Beam me upは、「私を転送で上げろ」という使い方で、惑星から船に戻るときの依頼に使う表現です。


●ジーン・ロッデンベリー
スター・トレックシリーズの生みの親、ジーン・ロッデンベリー。
本作はロッデンベリーへの愛に溢れていますね。
溢れ過ぎかも。(^_^;)